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マンションを考えるヒント

現役設計者がマンション購入を検討中の皆様におくる情報ブログです

二重床と直床の遮音性(誤解の理由と遮音の歴史)

「二重床は遮音性が高い」と言われる場合が多いですよね。

ここでは直床と二重床の遮音性に関して何回かに分けて書こうと思うのですが、まず最初に結論を言うと、殆どの場合

「二重床は遮音性が高い」と言う話は間違いです。

現在は新築のマンションであっても直床に較べて二重床の方が遮音性は低くなっているというのが現実で、このことは床材メーカーの試験データ、スーパーゼネコンや各種研究機関の資料と評価、品確法(住宅性能表示制度)CASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)等の公的評価にも明確に表れています。
それなのになぜ「二重床は遮音性が高い」と言われているのでしょうか。

私はそこに大きく3つの原因があると考えています。

■情報発信者の勘違いと無知
客観的な試験データや最新の評価の存在を知ってか知らずか。マンション業界には自分の感覚や思い込みを基にしてそれと正反対の事を吹聴する自称識者がとても多いことに驚きます。「空気層があるから遮音性が高い」とか「スラブ欠損云々」とか「聞いた感じの印象として静か」とか。まあそれも「表現の自由」と言えばそうなのかもしれませんが、事実と異なる情報を教えられる消費者側からすると只々迷惑な話でしかありません。

■「二重の床」というイメージの問題
二重床はわざわざコストをかけて造った空気層のある「二重」の床です。構造を見ても複雑。遮音ゴムの「見た目」もなんとなく立派。一見しただけでは消費者だけではなく建築関係者ですら二重床の方が遮音性が高そうなイメージを持ってしまうのも仕方のないことだと思います(実際は正反対なのですが)。

■性能試験制度の問題
LL-45という表記を見たことがある方も多いと思います。
これは「推定L等級」で表示された遮音性能で、実際のマンションでの再現性が低い等の問題が多かったため7年程前に廃止されました。
1980年頃の低い技術的知見に基づいて決められた推定L等級の遮音性能試験では、実際のマンションとはかけ離れた環境で試験を行っているため、カタログ上の性能表記と実際のマンションで施工した時の遮音性能との差が大きなものになっていました。(試験環境や性能推定手法自体に決まりが無い上に推定した空間性能値でしかなので、床材の遮音性能評価制度になっていない)
特に床下の空気拘束や壁際納まりなどの些細な条件によって遮音性が大きく変化する二重床で大きな性能の乖離が生じ、「試験場でのみ遮音性が高い(実際のマンションでは遮音性が低い)二重床」が堂々と売り出されていたのです。その結果、当然ながら二重床を採用した実際のマンションでは試験データよりも10デシベル程遮音性が悪化して遮音能力が正(遮音)ではなく負(増幅)になり、数々の騒音トラブルを引き起こす結果となってしまいました。
そういった反省を踏まえ、問題の多かったLL-45等の「推定L等級」に替わって2008年にはΔL等級という新しい制度(現行制度)が生まれることとなります。
参考:http://www.gbrc.or.jp/contents/test_research/acoustic/sound03.html

遮音性能評価法 過去の経緯
http://www.gbrc.or.jp/contents/documents/lab/sound03_01.pdf
床材の床衝撃音低減性能の等級表記(ΔL等級)と試験方法  財団法人日本建築総合試験所(GBRC)2012



そのため、新制度以前の古い知識だけしか持たない人は「二重床は遮音性が高い」という間違った記憶だけが残っているため、今も「二重床は遮音性が高い」という考えに至ってしまうのだろうと思います。


●2007年までの推定L等級(問題点)
・壁際の納まりを再現せず、部屋中心部の一般断面だけを部分形成して測定。
・5平米程度の小面積試験でも良い。
・「壁」が無くても良い(床下の空気拘束が無いため太鼓現象が発現しない)。
・実際のマンションには採用されない残響室の防振スラブ上で測定。
・標準的空間における騒音レベル推定値であり、製品の性能を表すものではない。
・推定性能の計算方法も製品によりまちまち。
 >>>結果として実際のマンションにおける性能の再現性(対応性)が低い。


●2008年以降のΔL等級(改善点)
・実際のマンションにより近い10平米程度での試験。
・床中央の一般断面だけではなく実際のマンションと同じ際根太部等の床際納まりを再現。
・実際のマンションのように床下空気層を拘束、壁際の端部納まりを再現。
・防振スラブ上での試験(残響室試験)を廃止し、実際に使われる普通(非防振)スラブ上での試験を基本とする。
・推定L等級のような「標準的空間における騒音レベル推定値」ではなく、製品単体の騒音低減性能を表記。(製品同士の比較ができる指標へと改善)
 >>>結果として実際のマンションにおける性能の再現性(対応性)が向上。


このあたりの話は二重床メーカーの竹村工業さんが集合住宅管理新聞(東京プランニング)の中で語っていますので興味のある方はご一読ください。

二重床(フローリング)の遮音性能の話
http://www.mansion.co.jp/remodel/example/example1303.html




次回以降で詳しく書こうと思いますが、新しい(現場性能に近い)遮音性能等級であるΔL等級においては、現在の新築マンションで使われている製品を見る限り

乾式遮音二重床の遮音性能 < 直貼遮音フローリングの遮音性能

という状況になっています。

しかしながら「情報発信者の勘違いと無知」によって誤った常識が流布され、その結果として消費者の皆さんが間違った情報を基にマンション選びをしなければならないという状況にあることは、建築に携わる者として非常に残念であり、とても申し訳なく感じます。
ここは単なる個人のブログではありますが、この点に関しては私なりに根拠となる資料を示しながら、すこし時間をかけて「正しい情報」を書いていこうと考えています。

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  1. 2014/06/06(金) 03:05:24|
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